【PARIS COLUMN】フランスの週末朝ごはん

“ 私はこれ!” で選ぶしあわせ
「プティ・デジュネ(朝ごはん)」

フランスの朝ごはん
Text by Junko Takasaki

色良く焼けたバゲットを割って、不規則な表面に発酵バターを厚めに塗る。 お好みでジャムか、ハチミツをとろり。お供はミルクたっぷりのカフェオレか、渋味の効いたカフェ・ノワール、もしくは紅茶。これがフランスの、朝ごはんの定番ユニットです。 たったこれだけなのに、なんて美味しい! これが美食の国の朝ごはんと、なるほど納得の多幸感に包まれます。

シンプルだけど満足度が高くなる理由は、ユニットを構成する一つ一つの食材が、それだけで食べても美味しいものばかりだから。 噛み締めるほどに香ばしさが立ち上るバゲットに、あまやかにミルキーな発酵バター。完熟フルーツをパッと煮詰めて旬の瑞々しさを閉じ込めたジャムと、花の香りが華やかなニュアンスを添えるハチミツ。バターとジャム、ハチミツの分量を変えるとまた違った味わいが楽しめて、つい一口、また一口と食べ進めてしまうのです。

スーパーマーケットやデパートの食品館では、それらの朝食必需品に専用の陳列棚を作って、「プティ・デジュネ Petit dejeuner(朝ごはん)」と表示しています。朝食のためのバターやハチミツ、ジャムには人によって「私はこれ!」という思い入れがあり、ゲストを招いた朝食ではその思い入れ話に花が咲くことも。

そんなフランス式の朝食は、週末になるとさらにパワーアップ。 まずコーヒーメーカーをセットして、いつもより時間をかけてテーブルを整えます。平日のシンプル&味わい朝食セットをベースに、クロワッサンや甘いヴィエノワズリーを組み合わせたり、朝市で買ってきた骨付きハムを横に並べたり。 週末の朝食では焼きたてパンがマスト!という家庭では、顔だけ洗って部屋着に上着を引っ掛けて、行きつけのパン屋さんに買いに行きます。

クロワッサンの断面

朝の爽やかな空気の中、地域の猫たちに挨拶しながら、散歩がてらにぶらぶらするのも気持ちいい。それがちょっとおっくうな気分の時は、冷凍庫にストックしておいたピカールのクロワッサンが心強い味方になってくれます。さっとオーブンに入れて、焼き上がりを待つ間に漂う香りをコーヒーと一緒に楽しんで、そんな時間もまたご馳走。そうだ、夏のバカンス中に農家の直売所で買ったリンゴジュースがあったっけ、なんて戸棚をゴソゴソしているうちに、オーブンのタイマーがピピピと鳴って出来上がりです。

少しだけ特別な週末の朝ごはんには、お皿やカトラリーも、普段使いとは別のものを使いたくなります。大切にしまっておいた縁飾り付きのサレグミンヌ皿(東フランスの伝統的な陶器皿)は、おばあちゃんに譲ってもらったお気に入り。おばあちゃんはクロワッサンにあんずジャムを合わせるのが好きだったね、おじいちゃんは何もつけないプレーン派だったっけ? サクサク、ホロリと軽やかにほどけるクロワッサンが、思い出話も連れてきます。

天気予報は、気持ちの良い秋晴れ。しっかり腹ごしらえしたら、午後にはブロカント(蚤の市)に出かけようーーのんびりと穏やかな時間が、そうして繰り返されていくのがフランスの週末です。

朝食の食卓風景
WRITER PROFILE

髙崎 順子 Junko Takasaki

埼玉県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て2000年に渡仏。書籍や雑誌、ウェブメディアにて、フランス社会と文化を題材に幅広く取材・執筆を行う。得意分野は子育て環境と食。パリ郊外在住。著書に「パリ生まれ プップおばさんの料理帖」(共著・新潮社)、「休暇のマネジメント~28連休を実現するための仕組みと働き方」(KADOKAWA)など。


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